マクルーハンはカナダ人のメディア論の巨匠であり文明批評家だ。
マクルーハンが言っていたことは今は普通だ。それがマクルーハンの偉大さを物語っている。
たとえば「伝え方が9割」のようなタイトルの本がある。中身内容をここではコンテンツだとする。そしてここでいう伝え方がメディアだ。マクルーハンは「メディアはメッセージだ」といったが今の話でいうと「伝え方」がメッセージだということになる。「伝え方もメッセージだ」というべきかもしれない。もちろん本来メッセージになるはずなのはメディアではなくコンテンツなのだ。
マクルーハンは「コンテンツがメッセージだ」とは限らないということを指摘したのだ。これは「コンテンツだけがメッセージだ」というわけではないといったというべきだろう。
だからマクルーハンは「コンテンツ（内容中身）＋（×？）メディア（伝え方）」
ということをいち早く指摘したのだ。最近よくある本のように「伝え方が9割」だったら「コンテンツ（中身内容）は1割でメディア（伝え方）が9割」の意味や重要性をもっているということになる。実際メディア（伝え方）が9割なのかどうかは知らないが。
これをテレビニュースで考えてみよう。同じ時間に同じニュースキャスターが同じ（ような）ニュースを読んでいるとする。だがそのニュースキャスターはいつもはスーツなのにその日は作業着を着て黄色いヘルメットをかぶってニュースを読んでいるのだ。
もしそういうことがあったらそれは明らかに非常事態だという意味を伝える。「メディアはメッセージだ」というのはこういうことなのだ。
こういうことは今となっては普通のことだ。だがマクルーハンはこういうことを1960年代に指摘している。正直今もマクルーハンがいっていたことはあまり理解されていない気がする。
マクルーハンはスター学者だった。だから映画にも出演している。スター学者はあまり本は読まれないがよく（勝手に）引用されるものだ。
マクルーハンはスター学者だから映画にも出ている。本人役だ。ウディアレンの映画だ。「アニーホール」
マクルーハンがいったことにホットなメディアとクールなメディアという分類がある。私はこれが長年わからなかった。
このホットなメディアとクールなメディアを「ブツブツ言わないメディア」と「ブツブツいうメディア」と言い換えてみよう。ブツブツいうのは読者視聴者聴取者観客だ。
映画好きだったら映画館でブツブツ言われたら発狂しそうになるはずだ。例えば「あいつの髪型変だな」と映画館で誰かが話していたらだ。「イヤお茶の間じゃないんだから勘弁して」と思うだろう。だいたい耐えられないと思う。映画は観客がブツブツいわないメディアだ。
でもテレビだったらこういうことは普通だ。
だいたい映画館にいく映画好きはどうやら映画館が暗くなる瞬間が大事らしいのだ。そして映画の内容については映画が終わってから話すものだ。
ラジオもブツブツ言わない。新聞を読んでいてもブツブツ言わない。
こういうブツブツいわないメディアとブツブツいうメディアとは明らかに違う。
テレビはブツブツいうメディアだ。
私はああいうのは嫌いだったがワイドショーはテレビが行き着く果てだったのかなと思っていた。ワイドショーのコメンテーターたちは視聴者だ。テレビ視聴者がブツブツいっているのをスタジオに持ち込んだのがワイドショーのコメンテーターだ。コメンテーターはブツブツいう視聴者なのだ。今はストレートニュースにもコメンテーターがいる。
やっぱり私はああいうのが嫌いだったがテレビはもう一歩進んだ。ワイプだ。スタジオでタレントたちがVTRを観ている。彼らが見ているVTRがテレビだ。そしてスタジオでVTRを観ているタレントたちは視聴者なのだ。私たち一般視聴者はタレントたちと一緒にテレビ（タレントにとってはVTR）を観ているのだ。
テレビが本質的にブツブツいうメディアである以上「ブツブツいう視聴者」をどう扱うかはテレビというメディアがそもそも抱えている問題なのだ。
そして今となってはある事件が起きた時にその事件そのものよりもその事件にういて視聴者や読者や観客がいった（いう）ブツブツの方が主役になっているのだ。
作品に関しても同じことが起きている。ここでいう作品とはゲームやアニメや音楽だ。ゲーム実況やアニメのリアクション動画が存在しているし渡井もそういうモノを好んで観ている（あるいは読んでいる）のだ。本来主役（？）はゲームやアニメなのだ。だががゲームやアニメよりもゲームやアニメについてのブツブツが主役になっているのだ。
こういうブツブツを意見というひとがいるがこれは意見ではない。ただブツブツ言ってるだけなのだ。
私はこういう現状を良いとは思っていない。
事実こういうことが世界中で起きているといっている。これから先はみなさん考えてください。ヨロシク。
ブツブツいってればいいんじゃない？
