世の中と私

グチです。でも世間のおかしさをいちいちいうと世間にいられないでしょ。

どうやら「プライバシー」がなくなるようです 「Y世代」

プライバシーという英語は日本でもそもまま使われています。私があえて日本語訳すると「個人的秘密」となるのですが。

 

ミステリーを中心に「プライバシー」の推移を考えてみたいと思います。

 

ミステリー(推理小説、旧名称は探偵小説)というジャンルがあります。

 

エドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」(1841年)が近代ミステリーの始まりだといわれているようです。

 

モルグ街の殺人・黄金虫―ポー短編集〈2〉ミステリ編 (新潮文庫)

モルグ街の殺人・黄金虫―ポー短編集〈2〉ミステリ編 (新潮文庫)

 

 

今ポーの人生をウィキで読んだのですが壮絶です。

 

そしてアーサー・コナンドイルのシャーロックホームズで花開くのです。

 

緋色の研究 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)

緋色の研究 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)

 

 

政府の要人であるとか王室のひとならいざ知らず一般庶民に「個人的な秘密」がそもそも必要なんでしょうか。

 

そういうこと私が考えはじめたきっかけは日本のミステリーです。

 

江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」と横溝正史の「本陣殺人事件」です。

 

屋根裏の散歩者
 

 

 

屋根裏の散歩者 人間椅子 パノラマ島奇談 (江戸川乱歩集)

屋根裏の散歩者 人間椅子 パノラマ島奇談 (江戸川乱歩集)

 

 

 

本陣殺人事件 (角川文庫)

本陣殺人事件 (角川文庫)

 

 

「屋根裏の散歩者」に関してはネタバレになるのでストーリーを紹介することはできません。ただ「本陣殺人事件」の斬新さはヒントになります。

 

「本陣殺人事件」は日本家屋では「密室殺人は不可能だ」という定説を覆した作品なのです。

 

私が問題にしたいのは「密室」です。

 

排泄であるとか性的なことは人に見られたくないのが普通です。それはそうです。

 

だけれどもそれ以外のことは、そもそも隠す必要があるのでしょうか。私はないと思います。

 

ある世代の日本のビジネスマンが海外赴任すると困っていました。日本では実現不可能なくらいの良い暮らしができるのですが。

 

その暮らしというのはコックさんもいてメイドさんもいる暮らしなのです。

 

ビジネスマン本人もその家族も「家の中に他人がいるので緊張してしまう」という理由で困っていたのです。

 

アメリカでは「Y世代」という言い方があるようです。「Y世代」は日本にもいます。

 

日本でもアメリカでも「Y世代」は今の大人からは評判が悪いのです。

 

でも「Y世代」の感覚はとても現代的です。物心ついた時にはもうSNSがあった世代です。

 

彼らは自分のプライバシー(個人的な秘密)をSNS上でさらすことに抵抗がないようなのです。

 

世阿弥が「秘すれば花」といっています。ある種のことは隠したほうが魅力的です。

 

この本も面白かったのですがロバート・ハリスさんの「アウトサイダーの幸福論」です。

 

 この本の中でハリスさんが昔の日本を振り返っています(ハリスさんは横浜生まれの横浜育ちなのです)。

 

昔の日本家屋には「縁側」があって、家と外界を明確に隔ててはいませんでした。

 

私の記憶でも、私の子供の時代(私は田舎の育ちですが)そもそも玄関がないのは普通でした。縁側はマージナルっていうか「ウチ」と「ソト」の真ん中にあったのです。

 

そういうところで家(ウチ)のひとと近所(ソト)のひとが世間話をするのは普通だったのです。

 

ものすごくお金持っている家は違っていたのでしょうが、そういう家はホンノ一部だけでした。

 

「本陣殺人事件」に戻るのですが、いわゆる日本家屋は部屋と部屋をふすまや障子で隔てます。

 

ふすまや障子で隔てるということは音は筒抜けなのです。

 

簡単な話「隠すから見たくなる」のです。

 

私はあの二時間ドラマがミステリーを終わらせたと考えています。

 

市原悦子さんが主演を務めていた「家政婦は見た」です。

 

家政婦は見た! DVD-BOX1

家政婦は見た! DVD-BOX1

 

 

私のこのシリーズを一作だけ見ました。最初「当然殺人事件かなにか起きるのだろう」と考えていたのです。その謎解きをいっかいの家政婦である市原悦子さんが解く話なんだろうと思い込んでいたのです。

 

でも私が見た作品では何も起きなかったのです。ただセレブリティといわれている人たちがいかに醜悪かを家政婦さんがさんざん見て、あまりの醜悪さにたえられなくなって、その家を去って行くだけの物語だったのです。

 

ミステリーというものは「殺人事件がおきるものだ」という私の考えは誤りだったのです。

 

他者の「個人的秘密(つまりプライバシー)を見る」ことのミステリーの本義があったのです。

 

そして「Y世代」には「個人的秘密(つまりプライバシー)」を隠すという感性がないらしいのです。

 

「個人的秘密(つまりプライバシー)」がないのなら、それを見る必要もありません。

 

「隠す」から見たくなるのです。

 

もう一作品紹介しておきます。これは映画です。

 

午後の遺言状 [DVD]

午後の遺言状 [DVD]

 

 あまりに(当時の)超大御所俳優がぞろぞろ出演しているので、当時もはや名優だった津川雅彦さんが小僧に見えるほどの豪華絢爛なキャスティングです。

 

この映画には若い二人の初夜の描写があります。舞台は田舎の村です。若い二人が結婚した日の夜に二人はある小屋で過ごすのですが、村人たちが一晩中そのまわりで歌い踊るのです。

 

子孫繫栄を願ってそういうことをするのですが。

 

こういう状況で、私が思う(考える感じる)エロティシズムは発生しない気がします。

 

小屋では明らかに性的な営みがなされているのですが。

 

ついでに書くと「草食系男子」の名付け親はコラムニストの深澤真紀さんです。

 

深澤さんは「褒め言葉」としてガツガツしていない若い男性を指して「草食系男子」といっていたのです。でも「今の若いやつ等はガツガツしてなくてダメだ」というニュアンスにいつの間にか変わってしまいました。

 

ただ深澤さんは女性なので、そこの考察ができなかったと思うのです。若い男性は性欲が異常なほどあるのです。

 

何故彼らは性に対して「草食系」でいられるのでしょうか。答えはエロ動画が山のようにあるからです。

 

これは人類始まって初の現象だと私は観ています。

 

このことが「良い」とか「悪い」とかいう気は私にはありません。

 

ただ、現代日本は「ありえないほどの性情報に接することができる社会」なのです。

 

具体的には書きませんが、若い男性は性情報にいくらでも(といっていいでしょう)接することができるので「草食系」でいられるのです。

 

現代日本人が普通だと信じているエロティシズムも変化するはずです。

 

しつこいのですが、だけれども「秘すれば花」でもあります。

 

「Y世代」がプライバシー(個人的秘密)を終わらせます。