「死刑存続か廃止か」について私には考えがありません。ただ凶悪犯罪で近しいひとを亡くされたりしか方のココロの引き裂かれる苦しみは想像できます。二つの気持ちの間で引き裂かれるはずです。
一つ目は「あの事件が起きる前の暮らしに戻してほしい。あの頃はあの人がいたこともあの暮らしも普通だと思っていたけれども思えばありがたいものだったんだ。だからあの事件の前に、あの人が死ぬ前に戻してほしい」という気持ちです。
二つ目は「それは不可能なことなんだ」という考えです。
一つ目の気持ちを(この言葉使いは不適鉄なのですが)私は「現状復帰の願い」と呼ぶことにします。
この二つの気持ちに引き裂かれることがご遺族の方の一番の苦しみであるはずです。
軽薄なマスコミが一頃ご遺族の元を訪れて「犯人を死刑にしてほしい」というコメントをとってきていました。御身内を亡くされたかたがお気持ちを一言で語ることなどもとより不可能に決まっていることくらい、ああいうマスコミ人にはわかっていなかったのでしょうか。
ただそび二つの気持ちで引き裂かれる(いわば)「地獄」を経てある種の精神の到達点に達してほしいと私は願うものです。
でも「現状復帰の願い」などということを誰も言いませんし、二つの気持ちの間で引き裂かれる「地獄」についての言及も私は読んだことがありません。
今の日本では「ひとの身になって考えるのはNGなんですよね」